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人一倍写真を撮られて育ってきたのに、

歯を見せた自然な笑顔はできない子どもだった。

ひとりっ子として物凄く物凄く物凄く

愛されて育てられた。

生まれたときからずっと撮られ続けて

わたしのアルバムはもう70冊を越えてる。多分。

真正面からのアングルは口を結んで、

両の口角をあげたものばかり。

その頃はそれが一番いい顔だと信じていたし、

何よりも崩れた顔で写真に写ることが怖くて、

変なプライドがあった。

通ってきたぜんぶの卒アルは

教師とカメラマンに笑え笑えと言われ続け、

馬鹿みたいに無理やり歯を見せてぎこちない笑顔が

はりついてるだけ。

でもあるときからそれが変わった。

歯を見せて笑えるようになった。

というより、誰よりもわたしを笑わせてくれて、

笑ってるときのわたしをいつの間にか撮っている、

そんな人に会った。

それは人生の中の大事件で、

今までとは全然違う写真の中の自分の顔に戸惑って、

こんなに笑っていたことに驚いた。

思いきり笑えて思いきり泣いて思いきり怒れる、

その人の隣はとても居心地が良い。

気遣いばかり先行しがちなわたしが、

本音でぶつかれる、そんな人。

わたしは弱い人間だから、

その人が近くにいない今は

あんまり上手に笑うこともできない。

満員電車の中、必死で鰓呼吸を繰り返している。

わたしすぎるわたしに変態できるようになるまで、

あと何年かわからないけれど、

乱れもがき揺らぐ自分をURLに落とし込んで、

何処ぞの人とも知れぬ他人に嘲笑われる、

いまはまだ、それくらいの存在です。