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ロロロロロ。

新宿駅東口16時半の話。

黒のブックカバーで文庫を読みながら、待ち合わせの相手を待っていた。久しぶりの小説だった。

小説を読む時間は、無になる。誰にも邪魔されたくなくて、頁を繰るその一秒も愛おしい時間。中高生の時分、授業合間の僅かな時間も文庫を読み耽っていた、あの感覚が戻ってくる。

沢山の人がiPhoneを見つめ、佇む新宿駅の中で見渡す限り、文庫を手にしていたのは、私だけだった。待ち合わせの相手への信頼がないと出来ない行為。一人でゆっくり読むよりもそれは特別な意味があった、のかもしれない。だからこそ小説がより面白く感じた、のかもしれない。

新宿駅東口18時の日は、iPhoneを見つめることすらできなかった。抑持っていなかった。それでも待ち合わせは成立した。暇を潰すのでもなく、只相手を待つ、空虚な時間。待ち合わせの孤独を感じると同時に、iPhone無しに成立する待ち合わせの不可思議を思った。

新宿駅東口で相手を待っている人人はどれだけの時間を待ち合わせに費やしてきたんだろう。時間の使い途は個人に委ねられているというのに、大半の人は小さな液晶ディスプレイを見つめ、緑の無料会話アプリに熱心になるのだから滑稽だ。

相手を信頼できるのならいつもと違う待ち時間も悪くない。

新宿駅東口16時半の日、相手を待つ時間に見つけたオノマトペ

マンゴーを乱暴に転がした時の音。

ロロロロロ。