わたし!わたしだよ!

第一声がなんとか詐欺みたいなその電話がきたのは12月のはじめだった。

無論誰かは分からなくて、怖くて、何故見知らぬ番号に出てしまったのかと自分を呪った1分間。

「どちらさまでしょうか」
「わたし!」の応酬。

一本調子なわたし(筆者)に折れたとみえて、
彼女が名乗った。
小学生の頃のクラスメイトだった。

相手が分かった途端、
受話器からの声はとても愛おしくて、
泣きそうになった。

小学生の時分から
発達障害を抱えていた彼女の会話は
昔からあちこちに飛んでいくのだけれど
彼女の個性である
そのすべてを愛おしいと思った。

地元で生まれ、生き、産む、
そんな地方特有の習慣が根強い地域から、
同級生が多くいる土地から、
地元を離れたわたしに、
彼女が連絡をくれた。
なによりもそのことが嬉しかった。

身の回りの物を整頓することが苦手だった彼女が、
はるか遠い日に手渡した携帯の電話番号を探し、見つけ、
連絡するまで、どれだけの時間がかかったんだろうか。

遠く離れた場所でも自分を想ってくれる人がいる。
心から愛おしくて、
優しい気持ちにさせてくれる相手がいる。

笑っちゃうくらいにクサイけど、
わたしは自分のことを考えるのが得意じゃないから
そのことだけが、
生きる原動力。